26歳になった日の朝8時半ごろ。
ケータイに知らない番号から電話がかかってきて、取った。
「まきちゃん?」
父の叔父(大叔父)の妻(大叔母)だった。
大叔父は5日前に73歳でガンで死んだばかりだった。
「お誕生日でしょう?おめでとう」
高くて明るい声がケータイの中で響いた。
私の番号は大叔父の携帯に登録されていたのだろう。
大叔母から電話がかかってくるなんて初めてだったし、
親戚といっても、会う機会の少ない間柄。
加えて、5日前に夫を亡くした大叔母の気持ちを思うと、
私はどんな風に話していいのかわからなくなった。
「お通夜ではね、まきちゃんの弔電を代表で読んでもらったのよ。ありがとう」
それは、通夜に行けないときのために念のため出しておいたものだった。
『(略)お悔やみ申し上げます。遊びに行くと、おじさんがいつも優しく迎えてくれて、うれしかったです』
確か、そんな風に書いて送っていたな、と思い出した。
通夜は仕事でどうしてもいけなくて、それでも仕事を早引きしたけど間にあわなかったんですって、
そんな言い訳をしようかな、と思ったけど、何の意味もないと思ってやめた。
「また、遊びにきてね」
そういって、ぎこちなくて短い会話を終えると、私たちは電話を切った。
そしたら涙がぽろぽろ出てきた。
私と大叔父は同じ誕生日。
亡くなった夫の誕生日に私に「おめでとう」といってくれた大叔母の気持ちはどんなものだったのだろう。
私に大叔父を重ね合わせて、ふと、「おめでとう」と言いたくなったのだろうか、
私に何か言葉をかけたくなったのだろうか、
複雑だったろう大叔母の気持ちと
明るく響いた大叔母の声とを思うと、
やっぱり涙がこぼれた
ただ、私は、大叔母が電話してきてくれたことが、うれしかった。