2008年7月20日日曜日

さとうとしお物語1

                   (2006年12月イケブクロ)
さとうは考えた。
あるとき、本当は自分はしおではないか、と考えた。
白くて砂みたいにさらさらで、キッチンにおいてあって。

自分はさとうであるのだと錯覚しているだけではないかと思えてきた。

さとうは自分の味がわからない。
「さとうが甘い」と言われたところで、本当に甘いのか自分の口では確かめようがない。

今まで自分はさとうだと思ってきたし、他の人にもそういう風に言ってきた。
だから、実は自分がしおだとばれてしまうことが、
突如、とてつもなくこわくて仕方がなくなった。

たとえ、さとうであることが正しくとも、
まずは誰にもばれないようにさとうかしおか確かめてみる必要があるきがした。
確認しておくことは、誰かにばれてしまう前の準備として大切なことだった。
安易に人にばれてしまうことは、自分が確信してきたアイデンティティを失うことだ。
そんなことばかりを考えて、3日三晩眠れずに過ごした。

「私は何者か!!」

とうとうさとうは叫んだ。
するとその調子を見ていたしおがいった。

「何者でもないさ。
みんな何かである素振りをしているだけさ。」

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本当、今のわたしはさとうです。

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