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2008年8月4日月曜日

さとうとしお物語2

                            (2007年8月波照間島)
さとうとみそがひそひそと話し出した。
さとう「ねぇ、みそ君。あいつをごらんよ。あそこの赤くてべとべとな奴さ。」
みそ「どいつだい?あ、あの卵焼きにのっかってるやつかな。」
さとう「そうそう。なんだか酸っぱいにおいがして、僕は耐えられないよ。近くによるのも憚れる。」
みそ「本当にまっかっかだね。ありゃぁ悪魔の血が流れてるんだな。きっと。」


ひそひそひそひそ。

ひそひそひそひそ。

ひそひそひそひそ。


赤くてべとべとした彼は、さとうとみその声を聞きながら、少し悲しい気持ちになった。
何を言っているかはよくわからなかったが、ぎらぎらとにらまれることが辛かった。
彼には彼の言葉があり、
彼には彼の料理に対する思いがあった。
それはさとうにもみそにも理解されないものだった。
声を上げたとしても、おそらくさとうとみそは聞き取れない。
彼は黙っていた。
ひっしで口元を押さえて声が漏れないようにした。


ひそひそひそひそ。

ひそひそひそひそ。

しお「さとうくん、みそくん。君たちは君たちが理解できないものを危険人物扱いするようだね。」
みそ「何言ってるんだ。だって、ありえないだろ。真っ赤でべとべとして。言葉も通じない。あいつが何者かなんてだれもわかりゃあしないよ。」
しお「自分が知っている調味料の世界観をみんなにおしつけるのは、ずるいんじゃないかな。彼らは彼らの幻想を持っているかを考えもしないで。」
さとう「じゃぁ、しお君はわかるって言うの?」
しお「うーん・・・わからないなー。」
さとう「なんだよ、それ。笑っちゃうよ。君もどうせ、わからないんだろ。」
しお「うーん・・・、でも彼の声が聞こえたらいいなって思ってる」

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参考: 『エピクロスの園』(アナトール・フランス)

2008年7月20日日曜日

さとうとしお物語1

                   (2006年12月イケブクロ)
さとうは考えた。
あるとき、本当は自分はしおではないか、と考えた。
白くて砂みたいにさらさらで、キッチンにおいてあって。

自分はさとうであるのだと錯覚しているだけではないかと思えてきた。

さとうは自分の味がわからない。
「さとうが甘い」と言われたところで、本当に甘いのか自分の口では確かめようがない。

今まで自分はさとうだと思ってきたし、他の人にもそういう風に言ってきた。
だから、実は自分がしおだとばれてしまうことが、
突如、とてつもなくこわくて仕方がなくなった。

たとえ、さとうであることが正しくとも、
まずは誰にもばれないようにさとうかしおか確かめてみる必要があるきがした。
確認しておくことは、誰かにばれてしまう前の準備として大切なことだった。
安易に人にばれてしまうことは、自分が確信してきたアイデンティティを失うことだ。
そんなことばかりを考えて、3日三晩眠れずに過ごした。

「私は何者か!!」

とうとうさとうは叫んだ。
するとその調子を見ていたしおがいった。

「何者でもないさ。
みんな何かである素振りをしているだけさ。」

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本当、今のわたしはさとうです。